SENSORS

main
起業家は、刺激的で面白い仕事。"ぐうたら"な社会でフレッシュに生きる、光本勇介の仕事論
bank04_01.jpg

「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第4弾となる最終回では、起業家として生きるゲスト、MC陣の実体験を踏まえ、起業家の行動哲学を探っていく。

前半は、齋藤が提示したキーワード「失敗のデザイン」をテーマに対話が進む。「失敗は悪いことじゃない」と話す光本氏のバックグラウンドにある、青年期の体験も語られた。

後半は、起業を目指す視聴者に向けて、ゲスト、MCからアドバイスが送られた。「社会性を養うために、一度就職するのも良い」「起業家はプロの仕事でバリューを出すべき」など、それぞれの経験を踏まえたアドバイスで、本サロンを締めていただいた。

“属性”と”個性”を履き違えてはいけない。成功は、失敗体験によってつくられる

黒田有彩(以下、黒田):
続いて、齋藤さんからいただいたキーワード「失敗談」に移りたいと思います。
齋藤精一(以下、齋藤):
はい。「失敗をどうデザインしているのか」をお伺いしたいです。失敗を次に活かすために、どのような思考をされているのでしょうか?
光本勇介(以下、光本):
先ほどの繰り返しにはなりますが、僕たちがやっているのはすべて実験です。だから、失敗は当然のように起こるものとして捉えています。失敗の繰り返しが成功につながりますから。だからメンバーにも「失敗は悪いことじゃない、バンバン失敗しろ」と常に言っていますね。失敗した場合に起こりうる最悪のケースも想定した上で、常に動いています。リスクヘッジをしているので、痛い目を見たこともないですね。
bank04_02.jpg

(左より)光本勇介氏、齋藤精一、落合陽一、黒田有彩

齋藤:
しかし、その考え方が外から理解してもらえないこともあると思います。自分たちは実験のつもりでも、業績が下がれば銀行からお金を借りることができなかったり。
光本:
立場によって、考えるべきことが違うと思っています。たとえば僕が上場企業の社長だとしたら、社員だけではなく、株主や世の中に対しての責任を持たなくてはいけません。しかし僕はこれまで自己資本で起業したり、会社を売却してケアすべき人の数を絞ってきたので、外の目を気にせずに実験を続けていられるのだと思います。
黒田:
光本さんの失敗を恐れない姿勢は、どこで培われたのでしょうか?生物学的には、失敗を恐れるのが自然な気もしていて…。
光本:
十代の頃、イギリスとデンマークに住んでいた経験があるので、その影響が大きいかもしれません。向こうの学校では、みんなと違うことが良しとされていたので、どんどん新しいことにチャレンジして、個性を出していくことが重要視されていたんですよね。チャレンジには失敗はつきものです。チャレンジと失敗を繰り返したことで、失敗に対する耐性がついたのかもしれません。
落合陽一(以下、落合):
日本では、スポーツができることや勉強ができることなど、その人の持つスキルを個性だと捉えがちなのですが、違うんですよね。それはただの属性です。個性というのは、その人の性質や性格といった内面的な要素を表すものですから。日本の教育システムは、スキルを伸ばすことが目的となっていて、個性を伸ばすことができていないと思います。

起業家の名を冠する者は、プロであれ。SENSORSが次世代起業家に送るメッセージ

黒田:
続いては、「起業のメソッド」をみなさまに伺いたいと思います。まず、起業に対するメリットとデメリットについて、教えていただけますか?
光本:
僕はデメリットを感じたことはないですね。これだけ刺激的で面白くて、毎日新鮮な気持ちでいられる職業ってないと思います。後悔をしたこともないですね。
齋藤:
大学を卒業してすぐ、起業したのですか?
光本:
最初は就職して、その会社を辞めたあとに起業しました。僕は高校生の頃からネットで物を売っていて、大学生の頃には新卒の手取り分くらいのお金は稼げていました。だからそのまま就職せず、起業家として生きていこうと思っていたのですが、社会の仕組みも知っておきたくて。変な話、名刺交換の方法も敬語の使い方も知らなかったので。それに、学生ビジネスで稼げる額には、限界があると思ったんです。
齋藤:
一度大きな組織に入って、社会経験を積むことは大事ですよね。僕は就職した経験はないものの、自分で会社をつくったあとに海外の会社に出向していたんです。そのときの経験があったから、社会に通用する素養を身につけることができたと思います。だから弊社のメンバーにも「1回大きな会社に就職した方がいいよ」と言うことが多いです。僕の会社は、礼儀やメールの出し方などを教えられる環境は整っていないので…。落合君はどうですか?
bank04_03.jpg
落合:
僕も、光本さんと同じような感じですね。大学2年の時から働いていて、一般のサラリーマンくらいの年収があったんですよ。

でも当時、サイバーエージェントの方と一緒に働いたことがあり、そのときに言われた言葉を今でも覚えています。当時の僕は忙しすぎて、酷い出来のデザインをあげてしまったんです。そうしたら先方から「もっとプロっぽい仕事をしてくれると思っていました」とメールがきたんですね。

そこから、自分がプロである自覚を持つようになりました。だからそれ以降、リソース不足などで100%の力を発揮できない仕事は、断るようにしています。自分のスタイルに合わない仕事は、クオリティの低いものしかあげられないですし。プロと自覚して仕事を選ぶことも、起業家として持っておくべき思考かと思いますね。

光本:
プロの仕事、つまり社会に通用する仕事とは何か、を知ることは大事ですよね。
落合:
価値のない仕事はするなってことだと思います。自分にしかできないことが、プロの仕事。それがなくてもお金がもらえるのがサラリーマンかもしれないですが。起業家は、常にプロの仕事をして社会にバリューを発揮しないといけない職業だと思いますね。
光本:
たしかに。落合さんのお話を聞いていて、すごく重要なことだと思いました。
齋藤:
黒田さんも起業していますよね?
黒田:
私は宇宙が大好きなので、宇宙に関する事業がやりたくて会社を設立しました。

これから宇宙に誰でも行けるような時代がくると思っているので、宇宙のことを発信していきたいなと。法人格にした方が仕事の幅も広がるので、まずは会社をつくってみました。私1人しかいない会社ですが、社会的な信用も得られましたね。

bank04_04.jpg
齋藤:
僕は30歳になるまではフリーランスで働いていて、肩書きは個人事業主だったんです。でも法人格でないとできない仕事が発生してきたので、仕方なく会社を設立したんですよね。起業は社会的な信用を獲得するための手段にもなり得ます。
光本:
「まずはつくってみる」ってまさに実験的ですね。そのくらい、カジュアルにやってもいいんじゃないかなと思います。やって学べることの方が多いので。
齋藤:
会社を潰したことはありますか?
光本:
事業を畳むことはあっても、会社自体がなくなったことはないですね。
齋藤:
いまはいくつの会社を持っているのですか?
光本:
今いるBANKの他に、STORES.jpという会社があって、そちらでは会長職をしています。
齋藤:
これから新しい事業をはじめる場合、さらに会社を増やすことも想定されていますか?それとも、ひとつの傘の中で事業を増やしていくのでしょうか?
光本:
むりやり会社を増やすことはないと思います。特別な理由がない限りは、同じ傘の中で事業を増やしていく予定です。
落合:
ひとつの傘の中で、ポートフォリオをたくさんつくっていくことが大事ですよね。その分、外部とのパイプラインが生まれて、新しい事業にもつながりますから。弊社も小さい会社ですが、40個くらいのパイプラインを持っています。ひとつの場所で、事業をたくさんつくり続けることが、会社の成長にもつながると思います。
bank04_05.jpg
齋藤:
ポートフォリオをたくさん持っていても、複数のドメイン配下に分散していると評価されにくいかもしれないですね。ドメインといえば、光本さんに質問したいことが。「CASH」のドメインを400万で購入した話をある記事で読んだのですが、なぜそこまでネーミングにこだわっているのですか?
光本:
基本的に、提供したい価値をそのままサービス名に反映しています。お金をテーマにした事業を行う会社だから、社名もBANKにしましたし。ご指摘いただいた「CASH」のドメイン費用は高いと思われるかもしれませんが、サービス名のわかりやすさでたくさんの人に使っていただければ、結果的に安い買い物になると思ったので、即決でした。
落合:
5,000万円だったら躊躇するけど、400万は安いですよね。
齋藤:
「STORES.jp」のドメインも、うまいなって思ったんですよね。当時はjpドメインができたばかりだったので。
光本:
あれは、中国人の方から20万円で購入したんです。その頃はお金がなくて、20万円でも高額に感じていましたが。でもそれ以降、「STORES.jp」という名前で得をすることが圧倒的に多くて、いい買い物だったと思います。僕たちは新しいサービスをつくることが多いから、わかりにくいサービス名だといちいち説明しなくてはいけないんです。でも、サービス名をわかりやすくすれば、その説明コストが下がることにある日気づいて。だから、なるべくサービス内容がイメージできる、わかりやすい名前を選ぶようにしていますね。

「あなたも明るい未来を期待するでしょう?悪くなる方を望む人なんて誰もいない」

「世界最高の起業家」であり、デジタル決済から電気自動車、さらに宇宙事業まで次々に事業を起こしてきた連続起業家イーロン・マスクの言葉である。

失敗を恐れずにイノベーションを起こし続け、明るい未来を創造し続けること。その繰り返しで、人びとの暮らしは豊かになり、新しい世の中が生まれていく。社会を変えるために持つべきものは、特殊能力ではない。必要なのは、失敗を恐れないで突き進む強い心と、挑戦を楽しむ無邪気さだ。これは連続起業家、起業家を志す者だけでなく、次世代で輝ける人材すべての人に必要な要素だろう。

今回ご登場いただいた光本氏とのディスカッションからは、これからの社会で必要とされる、次世代型人材になるためのヒントが垣間見えたのではないだろうか。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一のスケジュールはだだ漏れ状態!?ゲスト:光本勇介( 連続起業家の思考法 4/4))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。

Twitter:@azuuuta0630

編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。

Twitter:@masakik512

(2018-10-3 18:00:00)

main
SNS世代の漫画家が集う"トキワ荘2.0"。コルクBooksが切り拓く新たな地平
corkbooks01_01.jpg

2018年3月にリリースされた新サービス「コルクBooks」。まだα版ではあるが、Twitterではリリース直後からインフルエンサーたちに取り上げられるなど、タイムラインで見かけたことがある読者もいるのではないか。

マンガを掲載するためのSNS「コルクBooks」は、「ファンと一緒に作品をつくる、漫画家コミュニティー」と公式サイトでは定義されているサービスだ。マンガを「ラリー(派生)」–あるユーザーが投稿した作品に続けて、他ユーザーが原作の続編やスピンオフ、リメイクなどを投稿していく仕組み–でつないでいく点が、最大の特徴だ。

同サービスを運営する株式会社コルクBooksは、2018年3月、クリエイターのエージェント業を営む株式会社コルクの関連会社として設立された。代表取締役の萬田大作氏は、「コルクBooksは、インターネット上で漫画家同士が切磋琢磨できる”トキワ荘2.0″を目指している」と語る。ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」を参考にサービスを開発した経緯から、その先に見据える「テクノロジーによる編集の自動化」まで、萬田氏が目指す「編集」像について話を伺った。

マンガはネーム段階で十分面白い。未完成作品をコミュニティ全体で磨き込む、”GitHub型”の制作手法

ーーコルクBooksはいつ頃から構想されていたのでしょうか。

corkbooks01_02.jpg

コルクBooks代表取締役 萬田大作氏

萬田:2017年の夏ごろです。もともと、僕が2年間CTOを務めていたコルクでは強みの一つとして「ITの力」を掲げており、クリエイターの作品を世に送り出すうえで、最新テクノロジーの活用を重視していました。試行錯誤を繰り返すなかでたどり着いたのが、「ラリー」の仕組みです。

コルクBooksに作品を投稿し、それが他作家によって「ラリー」されると、作家は元の作品との差異を見比べることで、客観的かつ多角的に自らの作品をとらえ直すことができます。これは、編集者と一対一で作品をつくり上げていく、従来型の閉じた制作体制とは一線を画しているんです。

corkbooks01_03.png

左から、上原トム氏、つのだふむ氏、小柳かおり氏の作品。上原氏の作品にラリーされた2つの作品は、絵柄やキャラクターの性格には違いが見られるものの、共通の設定で描かれていることが分かる。

corkbooks01_04.png

作品ページの下部にはラリー履歴が記録されており、他の作品ページへ飛ぶことができる。

萬田:加えて、毎日「お題」を提示することで、新人漫画家にとって負荷のかかる営みの一つである「テーマ設定」をサポートしています。『宇宙兄弟』作者の小山宙哉さんのアシスタントの方たちがTwitter上で自主的に行なっていた「お題マンガ」という取り組みから着想を得ました。

ーー「イラク日報」「植物」といった、ユニークなお題が出されているのが印象的です。

萬田:お題は、「ストーリー」と「キャラ」の2つを軸に、僕と佐渡島が選定しています。過去には、出来事や人との関係性を表す「#失恋」「#久しぶり」、性格や人となりを表す「#弱点が魅力的な人」といったお題を選出しました。前者はストーリー、後者はキャラに力を入れて描いてほしい意図があったんです。

萬田:お題の決め方は、アリストテレス『詩学』を参考にしています。同書ではコンテンツに必要な要素が6つ定義されていますが(※上掲の図参照)、そのうちマンガで大切な要素は、「ストーリー」「キャラ」「テーマ」の3つです。「テーマ」にあたるお題をこちらから与えることで、漫画家は「ストーリー」「キャラ」の磨き込みに集中できます。

ーープラットフォームとして場を与えるだけでなく、クリエイターへの制作支援までを行うサービスなのですね。

萬田:おっしゃる通りです。この「ラリー」という発想の出発点は、「GitHub上のオープンソースソフトウェア開発(以下、OSS開発)をマンガ制作にも持ち込めるのではないか」と考えたことです。「OSS開発」とは、ソースコードを公開し、一つのソフトウェアを参加者全員がアップデートしていくコミュニティ型開発のこと。マンガ制作も、アップデートを前提に未完成のネーム(マンガの下描きのようなもの)段階で投稿してしまい、他の作家と一緒に描き直していくかたちのほうが望ましいのではないでしょうか。

なぜなら、マンガの面白さの核である「どんな場面を切り取るか」はネーム時点ですでに描かれており、作画は必ずしも一人の作家だけで行う必要はないからです。すでに核があるのだから、本格的な描き込みは「ラリー」でアップデートすればいいんです。

ーー作画の手間が省ける分、物語の核を洗練する作業に時間を割くことができるのですね。マンガ制作において原作と作画で担当を分けることはままありますが、そのような形式でのリメイクは斬新に感じられます。

corkbooks01_06.jpg

萬田:マンガ制作において、「ある作家が他作家のマンガを描き直す」といった文化が存在しないからですね。ソフトウェア開発においては外部からのアップデートが当然のように行われていますが、マンガにおいては一般的ではありません。

したがって、コルクBooksを伸ばしていくうえでは、世の作家たちに「ラリー」の仕組みを理解してもらうことがポイントだと思っています。「マンガは編集者と一対一でつくるもの」「ネームは読者に見せるためのものではない」といった固定観念を、いかにして打破していくかが鍵になるでしょう。

ーーたしかに、私も一人のユーザーとして、はじめてコルクBooksにアクセスした際に困惑した覚えがあります。元の投稿から「ラリー」作品がツリー状に広がっており、どのように読み進めればいいか分かりませんでした。

萬田:こうした新しい概念は地道に浸透させていくしかありません。そして、ユーザーに理解してもらうにはオンラインだけでは限界があります。ですから、毎月開催している描き方やSNS運用の講座内で時間をとり、直接説明するようにしています。

目指すは”トキワ荘2.0″ーー編集を自動化し、新人作家が切磋琢磨できるコミュニティをつくりたい

ーー佐渡島氏の「コルクBooks講座」や、漫画家・こしのりょう氏の「コルクラボ漫画倶楽部」など、オフラインで集まれる場づくりにも注力されている印象があります。

萬田:オフラインの場でしか、「ラリー」に必要な深い信頼関係は構築できないと考えているからです。SNSでコミュニケーションを重ねても、対面したことのない人物を深く信頼することは難しい。

ユーザー同士に信頼関係がなければ、「ラリー」はうまく機能しません。佐渡島のように名実知れ渡った編集者であれば別ですが、見知らぬ他人から受けたフィードバックに信頼を寄せることは難しいですよね。

corkbooks01_07.jpg

萬田:確固たる信頼感に基づく「ラリー」文化を根付かせた先に、新人作家たちがインターネットで切磋琢磨できるコミュニティをつくりたいんです。こうした構想を、かつて手塚治虫をはじめ著名な漫画家たちが競い合ったとされるアパート「トキワ荘」の名前を借り、”トキワ荘2.0″と呼んでいます。

ーーなんだかワクワクしてくる響きですね。そのようなコミュニティで、萬田さんたち開発者はどのような役割を担うのでしょうか。

萬田:僕たちの役割は、テクノロジーの力でクリエイターを支援すること。そのため将来的には、編集を自動化するシステムを提供したいと思っています。つまり、投稿されたマンガの面白さを定量的なデータとして算出し、自動でフィードバックを受けられる仕組みです。

夢物語のように聞こえるかもしれませんが、実は「売れる小説」を見極めるアルゴリズムは既に開発されています。書籍『ベストセラーコード』によれば、新たに小説が書かれた際、既存の小説群のテキストをコンピューターに機械学習させて導き出した「ベストセラー小説の条件」と重ね合わせて解析すると、ベストセラーになるかどうかを80%もの精度で予測できるそうです。こうした技術をマンガに応用すれば、編集の自動化も十分に実現可能だと思います。

ーー「編集の自動化」が実現した世界では、人間の編集者はどのような役割を果たすことになるのでしょうか。

萬田:物語のより”深い”部分を編集することになるでしょう。「主人公に困難が訪れるタイミングはいつにすべきか」「この場面ではどのような感情が描かれるのが適切か」といった「売れるマンガの型」は機械が導き出してくれます。人間の編集者は、作家とコミュニケーションをとりながら、大上段の世界観設定や、キャラ造形などのディティールの磨き込みに特化していけばいい。

加えて、作家同士が切磋琢磨するコミュニティづくりなど、「場の編集」も人間だからこそ担える役割でしょう。自動化を実現できれば、編集そのもののかたちが大きくアップデートされていくはずです。

「デジタル×マンガ」は成長市場。作家に必要なのは応援される仕組み

ーー現在は萬田さんや佐渡島さんが作品一つひとつにコメントされていますが、今後サービスが拡大していくと、お二人がフィードバックし続けるのは難しくなるようにも思えます。

萬田:さすがに難しくなるでしょうね。しかし、僕たちが張り付くようにコメントできなくなったとしても、コミュニティとしての価値は変わらず維持できるはずです。

なぜなら、ユーザーにとって一番の価値は、作品を介した深いコミュニケーションができることだからです。規模が大きくなり、投稿される作品の母数が増えれば、それだけジャンルにも多様性が生まれ、よりニッチなコミュニケーションが可能になっていく。そのような場へのニーズは少なくないと思うんです。

たとえば「コミケ」は年間50万人ほどが参加するそうですが、オンラインでも購入できる同人誌のためだけにそれほどの人数は集まりませんよね。ではなぜ集まるかといえば、同じコンテキストを理解できる人たちと、ニッチなコミュニケーションを楽しみたいからではないでしょうか。

corkbooks01_08.jpg

萬田:そして、そうした深いコミュニケーションが盛んなコミュニティを生み出すためには、従来の雑誌における「少年マンガ」「少女マンガ」「青年マンガ」のような性差や年齢層ごとの大まかな分類ではなく、世界観の設定やキャラ同士の関係性など、より細かなジャンルごとにパッケージングしたほうが効果的でしょう。

ですから、コルクBooksでは、ユーザーが作品をプレイリストとしてまとめ、自由に公開できる仕組みを実装する予定です。たとえば、好きな作家の作品群のなかで特にお気に入りのものや、似通った世界観が描かれている別作家の作品をまとめたりすれば、既存の枠組みに囚われず、多くのユーザーが共通のコンテキストに沿って作品に触れる機会を創出できます。ユーザー準拠のプレイリストだけでなく、Spotifyのように僕たちが公式プレイリストとしてデジタルマガジンを刊行することも考えています。

ーー「デジタルマガジン」ということは、基本的にはデジタル上で完結させたいと。

萬田:はい。コルクに出版を委託する可能性はありますが、コルクBooksからはデジタル以外でコンテンツを発信するつもりはありません。なぜなら、あくまでも電子版マンガ市場でのシェア拡大を狙っているからです。出版不況が叫ばれるようになって久しいですが、実のところ、電子版マンガだけに絞れば年間17%も成長しています。

以前、マンガを違法アップロードして広告収入を得ていた「漫画村」が閉鎖されて話題になりましたが、あのサイトは約1億人が利用していて、日本のWEBサイトランキングで31位まで登り詰めました。これは、「デジタルでマンガを読みたい」ニーズが高まっていることの証左でしょう。

ーー拡大する「デジタル×マンガ」市場で、今後どういった戦略でマネタイズしていくのでしょうか。

corkbooks01_09.jpg

萬田:たとえば、漫画家への応援としての投げ銭など、サポート機能を通したマネタイズが考えられます。noteやpolca、SHOWROOMなどの盛り上がりを見ても、コンテンツに付随するお金は、消費の対価としてではなく、クリエイターへの応援として支払われる潮流があることは明らかです。

まずは一つひとつの作品に対する応援が大切だと思っているので、個々のマンガに対するサポート機能から実装していく予定です(※取材時は未実装でしたが、2018年9月6日のアップデートにて実装されました)。ゆくゆくはファンクラブのように、作家に対して月額課金するシステムも導入しようと考えています。

というのも、作家が売れるために、その作家を応援したいファンのコミュニティをつくる必要があるからです。作家の世界観に共感し、最初に作品を広めてくれるファンがいなければ、それがどれだけ素晴らしいものであっても多くの人に読まれることは難しい。小山さんのような大ヒット作家ですら「コヤチュー部」というコミュニティをつくっているのは、そういった理由からなんですよ。

pixivやニコニコ静画などを先駆けに、2000年代に突入してからはインターネット上で作品を発表し、他人とコミュニケーションできる場が現れはじめた。近年では、本文中でも名前があがったnoteをはじめ、数多くのクリエイター支援系サービスが登場し、漫画家を志す人たちに与えられるチャンスはさらに増えつつあると感じる。

一方で、出版業界をはじめとした既存のコンテンツ産業は、氾濫したWEBコンテンツによって、それまで独占していた消費者の可処分時間を奪われる危機に瀕している。SNS上では分け合うパイが減り、ますます「食えない職業」になったと主張する漫画家を見かけることも多い。このような環境では、目指す前から漫画家の夢を諦めてしまう人も少なくないだろう。

そんな中、これまで出版社から流出しなかったマンガ編集のノウハウを惜しみなく公開し、成長市場での勝算を掲げるコルクBooksのようなプラットフォームは、クリエイターたちに大きな希望を与えるはずだ。

今後、利用ユーザーを増やしサービスを成長させていくための大きな壁は、萬田氏が指摘したように、業界の固定観念を刷新できるか否かだろう。「ラリー」文化が浸透し、”トキワ荘2.0″からマンガ界のエコシステムを塗り替えてしまうほどのクリエイターが誕生することを期待したい。

※当記事に書かれた内容は取材が行われた2018年7月18日時点のものであり、現行のコルクBooksが必ずしも同じ仕様とは限らない。コルクBooksの編集方針やシステムは随時アップデートされている。

執筆:岡島たくみ

95’s / 神大経済4回 / ㍿モメンタム・ホース所属のライター・編集者・フォトグラファー。

Twitter:@tkmokjm

編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。

Twitter:@masakik512

(2018-10-1 18:00:00)

main
事業づくりは「実験」。"普通"を全力で生きる、連続起業家の思考法
bank03_01.jpg

「連続起業家の思考法」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは起業家の光本勇介氏だ。

全4回にわたってお届けする第3弾記事では、「生涯起業家」と公言する光本氏の起業家マインドを深掘りしていく。

前半は光本氏の掲げる「挑戦を、実験と言い換える」という信念をテーマに行われたトークが繰り広げられた。「実験と言い換えるだけで、失敗を恐れなくなる」と話す光本氏の思考法に、研究者である落合も共感を示す。

後半は、MC落合が提示した「社会の空気」というキーワードをフックにトークが展開。「STORES.jp」や「CASH」など、多くの人に受け入れられるサービスは、いかにして生まれたのか。社会に向き合い続ける連続起業家が、社会の空気を感じ取るために必要なことは一体何なのか。さらに、ゲストとMC陣の「情報収集術」にも話が及び、フィルターバブルを防ぐためにそれぞれが行なっている工夫も明かされた。

失敗すればするほど、成功確度が上がる。挑戦を実験と捉え、恐怖を払拭

黒田有彩(以下、黒田):
それでは、光本さんが掲げている3つの信念のうち、3つ目の「挑戦を、実験と言い換える」についてお伺いしたいです。
光本勇介(以下、光本):
起業や、新しいことへのチャレンジを恐れる人は多いです。失敗にはリスクを伴うものですから。しかし成功よりも失敗から生まれる学びの方が価値がある。失敗すればするほど成功への確度も高くなります。だから、本当はどんどん失敗した方がいい。

メンバーには、よく「これはチャレンジじゃなくて、実験だよ」と言っています。チャレンジを実験と言い換えるだけで、「必ずしも成功しなくていい」となるし「失敗しても大丈夫」と思えるんですよね。

齋藤精一(以下、齋藤):
直感でやって「ダメだったら次に活かそう」というのは、研究者の考え方とも似ていますね。
落合陽一(以下、落合):
そうですね。研究者にとっては、成功よりも、何回失敗したかが重要です。じっくりひとつのことに取り組んで成功するよりも、何回も失敗した方が価値がある。良い結果も悪い結果も、たくさん知っている方が強いです。
光本:
数を打てば当たると思っているので、どんどんスイングしていこうと心がけています。「実験だ」と思い込むことで、思いっきりフルスイングできるんですよね。
bank03_02.jpg

(左より)光本勇介氏、齋藤精一

黒田:
これまでの打率はどれぐらいですか?
光本:
難しい質問ですね。何を成功と定義するかにもよりますが、4,5回に1回とかですかね…。リリース当日に3.6億円をばらまいた「CASH」について、よく「多額のお金をばらまいて怖くなかったの?」と聞かれるのですが、僕にとっては実験結果が得られればそれでよかったので、まったく怖くなかったんです。結果的に大幅に上回りましたが、当初は1億円の予算をつけていて「1億円を無差別にばらまこう」と決めていて。世の中に1億円をばらまいた人なんていないから、実行すれば自分だけがその結果を知ることができる。
齋藤:
そこが今日のテーマでもあるし、大企業の人に見てもらいたいですね(笑)。「僕たち、実験をしなければいけない」と。
落合:
本当にそうですね。投資金額以上の価値を、仕事に見出すことって非常に重要です。今、大規模な予算をつけて行なっている国のプロジェクトがあるのですが、「これはかけた予算以上の意味がある」と思っています。そのプロジェクトによってエコシステムが生まれ、やがて自社事業に還元されるとわかっていると、たとえお金は減ってしまったとしても、すごく意義ある仕事になる。仕事に対して、そういう視点を持てるかが重要です。会社から与えられた仕事をこなすだけでは、仕事に意義を見出すことが難しいのではないでしょうか。
齋藤:
それともうひとつ、事業をマルチドメインで考えることも重要だと思います。「買取サービスがだめだったらデータビジネスに移行しよう」とか。ほとんどの人が、そういう考え方を持てていないんですよね。車だったら車、みたいに一本勝負しかしない人が多い。
光本:
僕たちの想定どおりにいくことって、ほとんどありません。だから、まずは最低限のものを出してみる。そうすれば、実験結果が得られます。想定どおりにいかなくても、その結果を見てさらに事業をブラッシュアップしけば、絶対にうまくいく。そもそも「自分たちが正しい」と思ってサービスを世に出すことはやめた方がいいですね。

“普通”を全力で生きるーー「社会の空気」を感じるために意識していること

黒田:
ここからは、事前にMCのお二人からいただいたキーワードをもとに議論していきたいと思います。まずは、落合さんからいただいたキーワード「社会の空気」。
落合:
光本さんがつくってきた「STORES.jp」や「CASH」は、社会の空気に一致していると思っていて。空気って目に見えないものだからこそ、それを感じとるためには、優れた嗅覚が必要なんですよね。でも、自分で事業を回していると社会と距離が生まれるじゃないですか。さらに連続起業家の場合、どんどん視座が上がって、仙人に近づいていくイメージがあります。それでもなぜ、光本さんは嗅覚を鈍らせずにいれるのでしょうか?
光本:
僕は常に”普通”を全力で生きることを意識しているんですよね。といっても、僕も普通の人ですが(笑)。たとえば「STORES.jp」は、僕たちがECに関して「ド素人」だったから成功したサービスです。リリース当時、既に類似サービスはあったのですが、どれもECサービスに精通した人たちがつくっていて、素人から見れば小難しいものでした。そこに対して、素人目線のサービスを出せたので、多くの人の共感を得ることができたんです。
bank03_03.jpg
齋藤:
僕が「STORES.jp」を使ったきっかけって、サイトのデザインが良かったからなんですよ。他のサービスに比べて、テンプレートのデザインがすごくイケてて、決済の部分もわかりやすかった。素人目線でつくっていたから、ユーザーがつまづく点がわかっていたのでしょう。ECサービスに慣れている人がつくっていたら、「そこは当たり前じゃん」とスルーされていたかもしれない。
光本:
ありがとうございます。BANKも「金融のド素人による、マス向け金融サービス」がつくりたくて、設立した会社です。世の中の人たちにとって、金融サービスは必要不可欠なものなのに、既存の金融サービスはどれも小難しい。僕自身も、金融サービスを使っていて不便さを感じることも多かったんです。だからこそ、わかりやすい金融サービスをつくろうと思いました。サービスをつくる側の人間ではあるものの、常にド素人である努力はしていますね。
落合:
素人目線でサービスをつくると、まったく新しい発想が生まれるんですよね。僕の会社でも、違う業界から来る”素人”としての仕事がありますが、それは世間を驚かすための大喜利に近いです。研究を事業化する場合とはまったく違う。大喜利を続けて行けば、すごく賢い素人になって、イノベーションを起こすことができるのかもしれません。

落合陽一は「可愛い女の子」をフォローする。フィルターバブルをかいくぐる、プロフェッショナルの情報戦略

黒田:
光本さんの情報収集源は、主にネットですか?
光本:
そうですね。常にアンテナは張っていますが、ネットで情報を得る機会が一番多いかもしれません。基本的にはTwitterで情報感度が高い人をフォローして、自動的に情報が入るようにしています。しかし自分と同じ考えの人ばかりをフォローすると情報が偏るので、たまに自分とまったく違うタイプの人をフォローしてバランスをとっていますね。新しい事業はアイディアの掛け合わせから生まれるので、色々な情報を自分の中に蓄積しておくことを心がけています。
bank03_04.jpg

(中央より)落合陽一、黒田有彩

落合:
その気持ち、よくわかります。僕は、ちゃんとした基準を設けていて。タイムライン上に可愛い女の子の投稿が流れてきたら、必ずフォローするようにしているんですよ(笑)。その子たちって、僕がまったく知らない情報を持っているから。だから「この研究がクソだ」みたいな投稿の後に「このファッション可愛い」と流れてきたり(笑)。

それと、僕はエゴサーチのbotを動かしていて、僕に関する特定ワードが含まれた投稿が自動的にRTされるようにしているんですね。その中から、気になるアカウントをフォローしてみたりしています。そうやって工夫をしていかないと、気づかないうちに情報が偏ってしまいますよね。

齋藤:
僕はどうしても、関心がある領域の情報ばかりを追ってしまいます。だから紙や新聞といったアナログな媒体を見るようにしていますね。
光本:
僕も、雑誌は積極的に読むようにしています。毎日は読まないですが、移動時間は雑誌しか読まないと決めていたり。本はあまり読まないのですが、雑誌はバランスよくいろんな情報が集まっているから、いいですよね。
落合:
僕はメディア出演も、情報収集の機会と捉えています。月1のSENSORS収録でも、週1でやっているレギュラー番組でも、他の業界の人に直接話が聞けるので。現場の人に直接聞くのが一番早いので、こういう機会は大切にしていますね。

続く第4弾記事では、ゲスト、MC陣の実体験を踏まえ、起業家の行動哲学を探っていく。

前半は、齋藤からのキーワード「失敗をどうデザインするか」をテーマにトークが展開。メンバーにも常日頃から「失敗は悪いことじゃない、バンバン失敗しろ」と話す光本氏の、失敗を恐れない強さが磨かれた青年時代の経験も語られた。

後半は、長年起業家として時代の先端を走り続けてきたゲスト、MC陣の実体験が語られ、彼らが掲げる「起業家マインド」が深掘りされた。社会性を養うために、一度就職するのも良い」「起業家はプロの仕事でバリューを出すべき」など、それぞれの経験を踏まえたアドバイスで、本サロンを締めていただいた。

↓↓↓OA動画は下記よりご覧いただけます。↓↓↓

(SENSORS|落合陽一の会社のポートフォリオは…!?ゲスト:光本勇介( 連続起業家の思考法 3/4))

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。

Twitter:@azuuuta0630

編集:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。

Twitter:@masakik512

(2018-9-26 18:00:00)

main
国民的アーティストなき時代でも、ヒットメーカーでありたい。決済事業から米国アクセラレーターへの参画まで手掛ける、エイベックスの新規事業戦略
avex01_01.jpg

昭和の歌謡曲の時代も、90年代のJ – POPの時代も、ヒット曲の数々が世の中を彩っていた。毎週のヒットチャートを見れば、何が流行っているのか一目瞭然だった。テレビの歌番組が話題の中心にあった。
 でも、今は違う。シングルCDの売り上げ枚数を並べたオリコンのランキングを見ても、それが果たして何を示しているのか、判然としない。流行歌の指標がどこにあるのかわからない。それが今の日本の音楽シーンの実情だ。
(柴那典『ヒットの崩壊』より)

20世紀的なヒットの方程式が崩壊した今、新時代のスーパースターやエンターテインメントを生み出すべく、奮闘している組織がある。エイベックス株式会社だ。

1990年代に「レコード会社」として躍進したエイベックスは、時代の変化にあわせて姿を変えてきた。2005年には自ら「第2の創業」と位置づけ、「脱レコード会社による総合エンタテインメント企業化」を標榜し、事業の軸を音楽ソフト制作から映像事業やマネジメント、ライブ事業に転換することに成功。

しかしその成功に安住することなく、2015年末、CEO松浦勝人氏を中心に全社的な構造改革を開始した。組織・人事制度・風土改革、コミュニケーションの活性化を企図した新オフィスへの移転から、「エンターテインメント×テクノロジー」を重点領域とした新規事業創出の強化まで、時代の変化にあわせた新しい価値創出のエコシステムの形成に取り組んでいる。

そして迎えた2018年4月。創業30周年であり、「第3の創業」と位置付けるこのタイミングで、松浦氏の直下に、新規事業・イノベーション創出に取り組んでいく部門「CEO直轄本部」を設立した。また、2018年5月には、松浦氏が社長の座をCOO・黒岩克巳氏に譲り、自身は新規事業開発と新しい形のヒットアーティスト創出にコミットしていくことを発表。

さまざまな最新テクノロジーが興隆し、音楽体験の様相がますます変わっていく2020年代に向けて、エイベックスはいかなる戦略を取っていくのか。グループ執行役員で、CEO直轄本部長を務める加藤信介氏に話を伺い、エイベックスが取り組む、新規事業を中心とした新時代の価値創出の要諦に迫った。

決済事業から米国アクセラレーターへの参画まで。CEO直轄本部発のイノベーションが続々創出

加藤氏によると、CEO直轄本部が設置された目的は、「エイベックス全社の構造改革に、既存事業の範疇外の領域でよりブーストをかけていく」ことだという。設立から数ヶ月が経過したが、既にその成果は現れはじめている。

新たなアーティストとファンの経済圏構築を目指し決済事業に取り組む子会社「エンタメコイン株式会社」、株式会社メタップスとのジョイント・ベンチャー「株式会社mee」、株式会社エクシヴィと、VTuberとVRを活用した新たなアニメ表現を追求する「AniCast Lab. 」の設立など、CEO直轄本部発の新プロジェクトを続々と創出。

米国トップクラスのアクセラレーター(起業家支援プログラム)である Techstars, LLCが運営する音楽特化プログラム「Techstars Music」への参画も発表した。その他にも、公表はできないがM&A済みの案件や、新たな事業創出のタネもいくつも仕込んでいるそうだ。

加藤氏は新規事業の注力領域として、特に「VR/AR/MR」「バーチャルYouTuber」「ゲーム」「フィンテック/ブロックチェーン」「インフルエンサーマッチング」「ライブ配信/ライブコマース」を挙げるが、それに限らないという。

「エンタメコイン株式会社」・「株式会社mee」(フィンテック)や、「AniCast Lab. 」(バーチャルYouTuber、VR)など、掲げている注力領域での事業立ち上げはもちろん、他にも意欲的な取り組みを進めている。

たとえば、海外とのオープンイノベーション。「Techstars Music」への参画は、グローバル最先端の音楽×テクノロジーのエコシステムに入り込み、日本国内やアジアにおけるジョイントベンチャー設立や独占販売権の獲得といった、先鋭的なアイデアや技術を持った海外スタートアップとの協業推進を企図している。

他にも、新規事業目線でのライフスタイル領域など、エイベックスが推進すべきでかつタグライン「Really! Mad+Pure」に合うものであれば、領域に固執せず積極的にチャレンジする予定だという。

具体的な進め方としては、松浦氏とディスカッションしてトップダウン的に形にするパターンもあれば、メンバーの想いをもとにボトムアップ的に形にするパターンもあるという。また、エイベックス内部だけにとどまらず、業務委託でのパートナー契約、外部企業との提携やM&Aも積極的に活用する方針とのことだ。

avex01_02.jpg

加藤信介氏

加藤:これだけエンターテインメントを取り巻く環境が変化する中で、既存事業の中に留まらないけれどもチャレンジすべき事案も増えてきました。これまでだったら、そういった事案は誰がボールを持てばいいのか不明確で、隙間に落ちていたかもしれなかった。でも今はCEO直轄本部主導で進めていけるようになりました。

社員のアイデアもそう。良いアイデアだけでは事業は生まれません。会社として、想いを持った社員のアイデアのブラッシュアップや事業化を支援し、さらに予算もつける役割を組織として明確に作ったことで、既存の組織では溢れていたボールを拾えるようになったんです。

「浸透と息吹」の1年から、ファクトをつくる1年へ。CEO直轄本部設置の意図

既存事業、新規事業に関わらずイノベーションに向けたスピードが格段にアップしたエイベックス。その一因には、全社構造改革があるという。では、構造改革はなぜ行われたのだろうか。

構造改革の背景には、音楽業界を取り巻く外部環境の変化がある。ユーザーがエンターテインメントに価値を見出すポイントが「所有」から「体験」へと変わり、テクノロジーも進化した今、20世紀後半のように、テレビに出ている一人のスターに全国民が熱狂することはなくなった。「環境の変化はチャレンジングではあるが、逆に新しいスターや価値を創出できるチャンスでもある」と加藤氏は捉える。こうした環境変化に合わせて、できるだけスピーディーにイノベーションを起こせるように、組織の階層や各部署に付与する決裁権限を見直したり、社員をエンパワーメントすることを重視する人事制度や風土の再設計や、コミュニケーションを喚起するためのオフィス環境整備を断行したそうだ。構造改革後の1年間を、加藤氏はこう振り返る。

avex01_03.jpg

加藤:外部環境が変化する中で、僕たちは過去のやり方にとらわれない新しいやり方で、新しいエンタテインメントを創出し続けなければいけない。構造改革後の2017年4月から2018年4月は、構造改革が絵に描いた餅に終わらないように改革後の風土や制度運用を徹底して、「本当に変わるんだ、変わらなければ」という意識の定着と、その中で新しい息吹を起こそうとしていた1年でした。

その後、改革の成果を新規事業という形で世に出していくために設置されたのが、CEO直轄本部。よりスケールの大きな取り組みを、よりスムーズな意思決定で行なっていくために、松浦氏の直下に、新規事業推進の機能をもった組織を置いたという。

加藤:構造改革後の1年間は改革の「浸透と息吹」に砕心し、自分もそこに対してコミットしていたのに対し、今年はより具体的なファクトを積み上げていかなければいけないとの想いで、既存の担当領域に新規事業開発を加える形でCEO直轄本部を設立しました。

国民的アーティストなき時代でも、ヒットメーカーであり続けたい

加藤氏は、2020年代にかけてのエンターテインメントの潮流を、「ヒットアーティストやヒットコンテンツを自社で持っていることの価値が、ますます増していく」と展望する。テクノロジーの進化やグローバル化がますます進展するからこそ、単一コンテンツの射程距離はより遠くなり、発信する方法も増えるというのだ。

たしかに、テレビやCDを中心とした20世紀的な”ヒット”はもう生まれない可能性が高いだろう。しかし、インターネットが世界中に深く浸透した今だからこそ、グローバルにコンテンツが広がっていきやすいこともまた事実だ。従来のスーパースターは、一握りのトップアーティストたちがヒットチャートやテレビを独占する形だったが、新時代のスーパースターは、さまざまなタイプが共存していく形になるという。

加藤:日本中の誰もが特定のアーティストに熱狂するような状況は、もう生まれないかもしれません。しかし、YouTubeをはじめとしたインターネットサービスが普及した今だからこそ生まれるヒットもある。ピコ太郎やBIGBANGはその好例で、一国に止まらず、世界中に広がっていきました。昔とは形態が変化していますが、今後もスーパースターは生まれ続けていくはずです。

今後は、多様なジャンルやセグメントでスターが並存していくのが当たり前になっていくでしょう。だとしたら、プロデュースできるアーティストの数も増え、エイベックスのようなコンテンツホルダーにとっては、非常に喜ばしいことです。

外部環境が変化しても、ヒットアーティストをプロデュースする、エイベックスのコンテンツホルダーとしての価値は変わらない。むしろ、プラットフォームは数年サイクルで流行が入れ替わっていくが、コンテンツホルダーはプラットフォームのトレンドさえ見極めれば、永続的に価値を提供し続けられる。届ける場所がテレビからSNSや動画メディアに変わっても、アーティストそのものが持つ魅力は変わらないからだ。

avex01_04.jpg

加藤:ここまで紹介してきたように、CEO直轄本部主導で新しい取り組みに色々とチャレンジしてはいますが、「コンテンツホルダーとして、ヒットコンテンツを創出する」というエイベックスのコアコンピタンスは変わっていません。外部環境をうまく乗りこなし、会社としては価値あるコンテンツをどんどん世に生み出していきたいです。

その中でCEO直轄本部でやるべきなのは、その価値創出を「既存事業との両輪の役割」として新規事業という形でより骨太にすること。そして最終的には、新規事業の文脈で、コアであるコンテンツホルダーとしてのポートフォリオの強化にも繋げられればと考えています。

Tik TokやInstagram、Vineなど、新たなプラットフォームが次々と登場している。動画や写真など、それぞれに適したコンテンツのフォーマットが異なるので、そのルールを見極めることは必要不可欠だ。しかし、プラットフォームが移り変わっても、エンターテインメントの価値の源泉が演者であることは変わらない。多数のアーティストを抱えるコンテンツホルダーは、今後も重要な存在であり続けるだろう。エイベックスも、まさに新時代のコンテンツホルダーを目指しているが、この外部環境変動の波を捉え切ることができるだろうか。今後の動きにも注目していきたい。

取材・執筆:小池真幸

ビジネス・テクノロジー領域を中心に取材・執筆・編集を重ねる。東京大学で思想・哲学を学んだのち、AIスタートアップのマーケター・事業開発を経て、現職。1993年、神奈川県生まれ。「人文知とビジネス・テクノロジーの架橋」に関心があります。

Twitter:@masakik512

編集:岡田弘太郎

1994年生まれの編集者 / DJ。『SENSORS』シニアエディター。大学在学時に『greenz.jp』や『SENSORS』で執筆、複数のウェブメディアで編集を経験し、現在は編集デザインファーム「inquire」に所属。関心領域はビジネス、カルチャー、テクノロジー、デザインなどを横断的に。慶應義塾大学でデザイン思考/サービスデザインを専攻。

Twitter:@ktrokd

(2018-9-25 18:00:00)

main
アートは、情報氾濫時代の"方舟"となるーーCINRA主催「SNS展」
cinra01_01.png

昨年の12月、森美術館で開催されていた「レアンドロ・エルリッヒ展」に行った。錯覚を使った参加型の展示がInstagramでも話題になっていたが、中でも印象的だったのは、ボートが水面に浮いている”ような”展示物。一見船着場のように見えるが、そこに水はない。コンピューターによって計算された動きによって、ボートがゆらゆらと揺れているだけなのだ。私たちは「揺れるボートは水に浮かんでいる」と無意識のうちに固定概念を抱いているために、このような錯覚を起こすらしい。

固定概念や日常におけるさまざまな事象、物、人…。あまりにも当たり前に存在しているものに、人は気づきにくい。アート、特に現代アートにはそんな当たり前を気づかせる「問い」がある。だから人は「感性を磨く」ために週末に美術館へ足を運ぶのだろう。

日常の中で「当たり前に存在しているもの」といえばSNSだ。スマホを触れば、無意識のうちにTwitterを開いているし、楽しいことがあればInstagramのStoriesにアップする。なかなか会えない家族との交流の場所は、もっぱらLINEグループだ。

――SNSが空気のようにある時代で、SNSについて考える。

そんなテーマを掲げた展覧会『SNS展 #もしもSNSがなかったら』が、3331 Arts Chiyodaで開催された。会場には、SNSを舞台にさまざまな分野で活躍するアーティストによるオリジナル作品が並ぶ。さらに事前の一般公募で投稿された作品の中から、キュレーターがセレクトした作品も展示された。

会場となった3331 Arts Chiyodaがある千代田区は、「若者の街」としてイメージされやすい場所ではない。しかし来場者は7割ほどが10代後半から20代前半と思われる若年層の女性。取材日が展示最終日だったこともあってか、次から次へと人が訪れていた。

cinra01_02.jpg

会場に足を踏み入れると、まず目に入るのは壁一面に描かれた本展のメインビジュアル。Instagramでも人気のイラストレーター・たなかみさき氏によるものだ。多くの人が足を止め、スマホのシャッターを向けているのは詩人・最果タヒ氏による書き下ろしの詩。

その周りに浮かぶのは、「#もしもSNSがなかったら」のハッシュタグがついた思い思いのツイート。これらは一般公募で集められたものだ。ポジティブな内容が大半を占めるものの、中にはネガティブなメッセージも。そうした「リアルさ」もまた、SNSが孕む多様性を表現しているのかもしれない。

「SNSが空気のようにある時代に、SNSを使うならLINEモバイル」

「SNS展」は、株式会社CINRAが主催し、特別協賛にLINEモバイルが参加する形で開催された。CINRAは、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営、WEB制作、イベント企画などを手がけるクリエイティブカンパニーだ。

カルチャーやアートに関心のある若者から支持され、昨年ローンチした女性向けのライフ&カルチャーコミュニティ「She is」も注目を集めている。最近ではリアルイベントの開催にも注力しており、小学校を貸し切って開催したカルチャーフェスティバル「NEWTOWN」や、渋谷にある複数のライブハウスを会場とした「CROSSING CARNIVAL」などがある。

LINEモバイルは、MVNO事業を手がける会社だ。サービスの特徴の1つとして、LINEやTwitter、FacebookやInstagramといった主要SNSのデータ通信量をカウントせず、使い放題となる「データフリー」機能を打ち出している。

今回の取り組みが始まった経緯、企画のコンセプト、そして企画展終了後はどのような展望を描いているのか? LINEモバイル株式会社 マーケティング担当 福島広大氏、株式会社CINRA She isプロデューサーの竹中万季氏、ディレクター 柏木良介氏にお話を伺った。

cinra01_03.jpg

左から福島広大氏、竹中万季氏、柏木良介氏

LINEモバイルがサービスを展開するMVNO業界では、複数の事業者が凌ぎを削りながら事業展開を進めている。そんな中でLINEモバイルはどのようなポジションを取るべきか。改めて自社のアイデンティティを模索する中で辿り着いたのが、「SNS」であった。

福島広大(以下、福島):SNSが普及したことによってLINEが生まれ、さらにその根本である通信を支えるためのサービスとしてLINEモバイルは誕生しました。私たちは自社の強みを考えていくなかで、SNSに寄り添いながら事業展開をしていくべきだと結論づけたんです。

そこでLINEモバイルが発表したのが、主要なSNSが使い放題の「データフリー」機能だ。MVNO業界において一番の戦場となる春商戦のコンセプトは、「SNSが空気のようにある時代に、SNSを使うならLINEモバイル」。どうすればユーザーに対して、効果的にメッセージを伝えられるのか。アプローチの1つとして選んだのはアート展であった。

cinra01_04.jpg

福島:キャンペーンであれば、ユーザーに参加してもらう投稿型を取ることが非常に重要だと考えました。しかし、これだけ情報が溢れている社会の中で、ただ投稿を集めるだけでは一過性の施策にしかなりません。何かしら形のあるアウトプットに繋げていくことで、参加した人の心に残る施策が実現できると考えました。たどり着いたのが、「アート展」です。

CINRAが意識した「開かれた場づくり」

LINEモバイルが今回「SNS展」への特別協賛を決めた理由は2つある。 ひとつはCINRAが手がけるコンテンツが「SNS特有の空気を理解している」点。もうひとつはWEBだけに留まらず、リアルイベントも積極的に手掛けている点だ。

CINRAが10年以上に渡り「CINRA.NET」を運営する中で特に意識していたのは、「キュレーション」だ。音楽、アート、デザイン、映画など「本当に良いと思うものをCINRAがオススメする」ことに重きを置いて情報を発信してきた。

昨年9月にローンチされたコミュニティメディア「She is」は「自分らしく生きる女性を祝福する」をコンセプトに掲げている。そのコンセプトに共感したり、何か想いを抱く人たちが集まる場所を目指して、運営している。

このような独自の”色”を持つ自社メディアがあるために、CINRAはクリエイティブやカルチャーに関心がある読者を多く抱えている。CINRAは今回の企画を考える上で、”良き理解者”であり”味方”である読者の興味を惹くことを1番に考えたそうだ。

cinra01_05.jpg

竹中万季(以下、竹中):私たちが抱えている読者には、SNSで情報を能動的にとりにいく人や、自ら意見や想いを発信する人が多く、「SNSがある今について考える」という企画を行うときに、まずはそのような人たちに興味を持ってもらえる企画にしたいと考えました。足を運んでくださった方の多くは、そうした方々のSNSへの投稿がきっかけで来場されていて、結果として広くリーチすることができました。

CINRAのもうひとつの強みは、「コミュニティ形成力」。読者に会い、”集う”場所を作るために、リアルイベントも積極的に行っている。今回の展覧会開催にあたっても、その知見は活かされた。

「SNSをテーマにした展覧会」であれば、オンラインだけで完結させることができたかもしれない。だが、「今やSNSはオフラインとは切り離せない」と、竹中氏は考えている。

竹中:「CINRA.NET」や「She is」を運営する中で、ファンを増やし、コミュニティを形作るためにはリアルの場で集うことが必要不可欠だと感じていました。今回は展示のテーマが「SNS」なので、もちろんSNSやWEB上だけで完結する展覧会という形も考えられたかもしれないですが、SNSで出会い、リアルでの付き合いに繋がっていくことが当たり前になっている今、最終的にリアルの場所で展覧会を行うという形にしたほうが、「SNSがある今」が見えてくるのではないかと考えました。

SNSの可能性を”思索”させる問いを投げかける

LINEモバイルはデータフリー機能を直接的に訴求するのではなく、その背景にある思想を伝えることを選んだ。「今自分たちが使っているSNSって結構大事だよね」と思ってもらえるようにーー。

この思想を伝えるためにCINRAが考案したテーマは、「もしもSNSがなかったら」。空気のように存在するSNSについて、立ち止まって考えるための「問い」だ。SNSの魅力をストレートに伝えるのではなく、敢えて逆説的な問いを設定した理由は、SNSの持つ多面性を伝えることにあるという。

竹中:SNSの登場で、誰もが「個」としての発信ができるようになりました。 お互いの意見が違っていたとしても、別の部分で重なることもあるのがSNSのおもしろさだと思います。SNSをテーマとして扱う上で、できるだけ多様な意見が集まるようにできればと思いながら企画しました。

公募で集まった「#もしもSNSがなかったら」のハッシュタグがついたメッセージの中には、SNSに対しネガティブに捉えているものもある。会場にはそれらの意見も、ポジティブな意見と同列に展示されていた。来場者は立体物となったメッセージを通して自分自身の感情と向き合い、SNSがある現在となかった世界を比較して想像する。。その結果、感想として「エモい」とツイートする人も多かったそうだ。

「ポジティブな感情もネガティブな感情も、どちらも提示することによって、共感できる人の数が増えたのではないかと思うんです」と柏木氏は展示を振り返る。

「SNSに対する想いがある人」がアーティスト・キュレーターに

今回の展覧会では、ジャンル、表現方法、活動範囲にいたるまで「ベン図」のように微妙に重ならずに、SNSで活躍しているアーティストたちの作品が発表された。彼ら、彼女らの人選には両社のこだわりがある。

数々のアーティストとのネットワークを持つCINRAは、SNSの持つ多様な側面を表現できるようなアーティスト、また公募作品をセレクトするキュレーターを選出した。

柏木良介:今回関わってくださった方の中には、写真家・濱田英明さんのようにInstagramを通じて世界的に人気になられた方もいれば、燃え殻さんのようにTwitterを主舞台に文章でさまざまな人を惹きつけている方、そしてゆうこすさんのようにSNSを特徴ごとに使い分けながら発信されている方もいらっしゃいます。表現方法だけではなく、活動範囲やその方々が抱えるファンが被らないようにすることで、多くの人に『SNS展』のことを知っていただけたのではないかと思います。

さらにCINRAは、「SNSに対して、自分の言葉を持っていそうな人」を意識的に選んだという。

竹中:SNSが持つポジティブな面、ネガティブな面の両面に気づき、SNSについて何かしらの言葉、想いを持っていそうな方に参加していただきました。だからこそ、アーティストの方ひとりひとりが「もしもSNSがなかったら」というメッセージを自分ごととして捉えてくださり、楽しみながら作品制作をしていただけたのだと感じています。

cinra01_06.jpg

企業が掲げるメッセージを世の中に伝えるためには、さまざまな手段がある。今回CINRAとLINEモバイルは、社会に対して問いを投げかける役割を持つ「アート」に注目し、企画展を通じてメッセージを投げかけた。

CINRAのクリエイターとのネットワーク、メディアを基軸にしたコミュニティ、そしてそれらに集まるファンがあったからこそ、実現した企画展だろう。

企業が世の中にメッセージを発信する場合、主な手段として選ばれるのは広告やキャンペーンだろう。情報が溢れ返る現代において、直接的な訴求は一過性のものになりかねない。アートを通して問いを投げかけ、コミュニティの力で波及を呼んだ今回の「SNS展」のようなアプローチが注目されてもいいのではないだろうか。

執筆:いげたあずさ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター/編集者。ビジネス・テクノロジー領域をはじめ複数媒体で取材・執筆。 アパレル販売・WEBマーケターを経て現職。 映画と音楽が好き。未来の被服の在り方、民族学、伝統文化などに興味があります。

Twitter:@azuuuta0630

取材・編集:岡田弘太郎

1994年生まれの編集者 / DJ。『SENSORS』シニアエディター。大学在学時に『greenz.jp』や『SENSORS』で執筆、複数のウェブメディアで編集を経験し、現在は編集デザインファーム「inquire」に所属。関心領域はビジネス、カルチャー、テクノロジー、デザインなどを横断的に。慶應義塾大学でデザイン思考/サービスデザインを専攻。

Twitter:@ktrokd

撮影:萩野格

広告プランナー/フォトグラファー。

instagram:@itaru_ha_2

(2018-9-25 08:00:00)