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テレビに求められる"イノベーションのテクニカルチャレンジ"–朝倉祐介×前田裕二 リーダーズトーク

「人生100年時代の次世代リーダー」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストはシニフィアン株式会社共同代表 朝倉祐介氏と、SHOWROOM株式会社代表取締役 前田裕二氏だ。

4回にわたってお届けする最終回。第4弾記事では、前回に引き続き、テレビの未来に必要なイノベーションについて議論した。
MC落合はテレビの「ながら視聴」について指摘し、前田氏は自身が手がける「SHOWROOM」を引き合いに出し、能動的メディアと受動的メディアの戦略の違いを語る。

■ 日本のテレビはGoogleが太刀打ちできないITインフラを持っている

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落合陽一

落合陽一(以下、落合):
日本のテレビは、各社のミッション設定が明確に違うかといわれたら、そうではない。ミッションを掲げなければ、コンテンツを差別化できません。
前田裕二(以下、前田):
社会の変化がテレビにとって不利な状況をつくっています。テレビを見ている最中に意中の人からLINEがくると、テレビから注意がそれてしまいますよね。つまり、自分のアクションに対してインタラクティブな反応があることを人は好みます。

一方で、テレビは受け手と送り手が確立された一方通行のメディア。これからのテレビは、自己否定をしてでも、インタラクティブなコンテンツを生み出すことが必要なのだと思います。

落合:
イノベーションのテクニカルチャレンジですね。世界中を見渡しても、日本ほど多くの人が同時に同じテレビ局の番組を観ている国はありません。
相当のITインフラが整備されていなければ、これほどまでのアクセス数を捌ききることは困難です。日本のテレビへの集中アクセスは、Googleでも頭を抱えるほどの接続数です。
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朝倉祐介氏

朝倉祐介(以下、朝倉):
これほどまでに素晴らしいインフラを持っていますし、何よりテレビは訴求力のあるメディアなので、アイディア一つで革新が起こりえます。

■ 能動的メディアと受動的メディアのビジネスモデル

落合:
僕は自宅で仕事をしながら、2台のテレビで異なるチャンネルを同時に流しています。喫茶店をイメージしてもらうと分かりやすくて、「ながら視聴」で作業がはかどるんですよね。
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前田裕二氏

前田:
スタンスを明確にしたほうがいいと思います。普通にテレビを観るユーザーは主体的で、「ながら視聴」は受動的ですよね。テレビとしてユーザーにどう接して欲しいのかを明らかにしなければ、どちらの層にも受け入れられないと思います。

「SHOWROOM」は完全参加型の主体的メディアです。そのスタンスを明確に打ち出しているからこそ、動画配信アプリで収益1位を記録しているのだと思います。どちらを選ぶかは戦略次第なので正解はありませんが、受動的な場合は広告ビジネスの方が向いているのではないでしょうか。

朝倉:
すべてのメディアが参加型では疲れてしまいますもんね。
落合:
僕は能動的にメディアに接する時間と、受動的にメディアに接する時間を切り分けています。朝6時55分から7時30分まではゲームをして、その他の作業時間はテレビやラジオを流し「ながら視聴」しています。

集中可処分時間を1日のどこに置くかを決めるのは面白いですよ。テレビもそれに合わせて放送内容を変える工夫をしてみるといいかもしれませんね。

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齋藤精一(以下、齋藤):
お話を伺っていて、「日本の普通って何だろう?」と考え、その普通を違う角度から崩していくことに可能性を感じました。テレビもそうですが、事象を抽象化し、着想したアイディアを実行に移すことにチャンスがありそうですね。

■ 自分を見つめ好きなことに挑戦せよ! 次世代リーダーからのメッセージ

–最後に、これからビジネスを始めようとしている方にゲスト二人からヒントや心構えをお聞かせいただけますか?

朝倉:
人生はなんとかなるので、自由に好きなことに挑戦して欲しいです。競馬において活躍できる馬は本当に一部で、活躍できない馬は一生光を浴びることはありません。ただ、人間はいつだって輝けるチャンスを持っています。失敗を気にせず、やりたいことに邁進してくれたらと思います。
前田:
「これからこんなビジネスが流行りそうだ」と外の世界に目を向けることも重要ですが、何よりもっと自分を見つめる時間を持ってください。自分の幸せの価値基準を知らないことほど、不幸なことはありません。

また、日本でもっとも時価総額の高いトヨタは、世界順位で42位。僕は、この現状が悔しいです。「世界で戦う」のではなく、世界一を目指してください。

世界最大の起業家コミュニティ「エンデバー」の創業者であり、”今世紀最高のメンター”と称されるリンダ・ロッテンバーグは著書において、以下のように語っている。

「成功を阻む最大の要因は、構造的な障壁や文化的な障壁ではない。それは精神的、感情的な障壁である」

朝倉氏が「人間はいつだって輝けるチャンスを持っている」と語るように、たとえ挑戦が失敗に終わったとしても、リーダーになる権利を失うわけではない。むしろ、その挑戦心こそが次世代リーダーに駆け上がる唯一の資格なのだ。

今回登場いただいたゲスト二人とのディスカッションから、次世代リーダーの条件、リーダーとなる第一歩の踏み出し方のヒントが垣間見えたのではないだろうか。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi

Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh

Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

(2018-1-23 15:00:00)

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イノベーションを起こすリーダーの思考・視点–朝倉祐介×前田裕二 リーダーズトーク

「人生100年時代の次世代リーダー」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストはシニフィアン株式会社共同代表 朝倉祐介氏と、SHOWROOM株式会社代表取締役 前田裕二氏だ。

4回にわたってお届けする第3弾記事では、ゲスト二人とMCがリーダーに求められる「具体と抽象を行き来する思考」について語った。
前田氏は能を引き合いに出し、「三つの視点」の重要性について言及する。また最後には、「テレビの未来に必要な次世代リーダー」についても意見が交わされた。

■ リーダーには、抽象概念を言語化するスキルがある

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(左より)齋藤精一、落合陽一

–続いて、次のテーマ「一流」についてお話しいただければと思います。

落合陽一(以下、落合):
アートに長い期間携わっていて、ある作品が雑に作られたものなのか、もしくは精巧に作られたものなのかを見極められるようになります。これはアートに限ったことではないと思っていて、ビジネスでも同じことが言えると思うんです。
齋藤精一(以下、齋藤):
広告も同じですね。電車で吊り広告を見ていて「なぜこんなコピーやグラフィックなんだろう?」と疑問を持つことも少なくありません。学生時代に建築を専攻していたときに、友人が「この建築は素晴らしい」と言っている一方で、僕は全く共感できない経験をしました。

しかしいつからか、「なぜ共感できないのか」をしっかりと言語化するようになりました。すると頭の中がクリアになり、物の見方や自分の志向性が分かってくるんです。

落合:
僕も同じです。学生時代は、展覧会で作品を一通り見た後に、構図を真似して描く訓練をしていました。すると、どうしても思い出せない構図が出てきます。
要するに、興味のない作品は思い出せないんです。

そうしたことを繰り返しているうちに自分の好みが明確になりました。作品の審査員を務めるようになってからは、見る作品の数が数千倍に増え、その傾向が顕著です。手を抜いているのか、一生懸命つくったのかが一瞬にして見分けられるんです。

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朝倉祐介氏

朝倉祐介(以下、朝倉):
個人的な話をすると、会社員時代は「言われたことをこなす」ことに徹していました。与えられた仕事をとにかくやることが正しいと信じ、それを果たさなければいけないというマインドセットだったんです。ただ、そうした働き方には楽しさを見出せなかった。

しかし、自分で小さな会社を経営するようになってから、誰がどう言おうと自分が正しいと思うことを貫き通すようになってから、物事の捉え方が変わりました。組織のリーダーになり、誰も助けてくれない環境に身を置くと、自分の頭で考えざるを得ません。

■ 日常を抽象化して捉える「我見、離見、離見の見」

前田裕二(以下、前田):
僕は学生時代から「抽象化ゲーム」をしていました。目に見えている事象の中で自分の琴線に触れるもの、あるいは社会が認めているものをピックアップし、なぜそう感じるのか、認められているのかを考えるんです。
人を説得する作業は、抽象的な命題を置いて、それに紐づく具体例を挙げることだと思うのですが、この具体例の引き出しの多さは、逆に具体例から抽象化した回数の多さで決まります。

たとえばイチローさんは一流の選手ですが、「すごいから」では抽象化できていません。「何がどのようにすごいのか」をまず具体的に言語化することが抽象化に結びつきます。こうした訓練を繰り返すことが自分の頭で考えるということだと思います。

落合:
会食でよくあることなのですが、「全部美味しいです」と言う方がよくいるんですね。「何が一番美味しかった?」と尋ねると「いや、全部美味しかったです」と言う。
前田:
一流の人ほど、「一流って何ですか?」って聞かれるアウトプットの機会が多いんですよね。「抽象的には一流とはこういうことです。具体的にはこういうことだと思います」と答える機会を意図的に増やすと、一流に近づけるんじゃないかと思っています。
具体的な事象を抽象化して、命題を解く機会が何度も求められるので。食事の感想が単調なのが分かりやすい例で、日本人はアウトプットする機会が少なすぎるので、インプットの質が上がらない。
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齋藤精一

齋藤:
僕は抽象と具体を行き来する…つまりミクロとマクロの行き来の速い人を尊敬しています。
学生によく言うのは「万里の長城のレンガを組んでいながら、何のためにレンガを組んでいるのかが理解できる人になれ」。小さな作業を積み重ねながら、それが大きな意味をなすことまで考えられると、世の中の見え方が変わってきます。
前田:
能には3つの眼、視点があるといわれていますよね。一つは自分視点の「我見」。二つ目がお客さん視点の「離見」。そして最も重要なのが「我見」と「離見」を俯瞰する「離見の見」。

何かを売るときも同じで、「我見」だけではいけない。お客さん視点の「離見」、自分の振る舞いがお客さんにどう映るかを見る「離見の見」が求められます。

落合:
以前ピアニストの方と対談をした際に、「ピアノは一人称の楽器になりやすい」とおっしゃっていました。指揮者とお客さんを意識しても、演奏中はどうしてもピアノから離れられないのだそうです。

今お話を聞いていて、「我見」と「離見」、「離見の見」に共通すると感じました。世阿弥からもグランドピアノからも同じ事例が出てくるということは、一流の人材は「3つの眼がある」のではないでしょうか。

■ 次世代リーダーは”自己破壊的イノベーション”で生まれ変わる

–続いて、最後のキーワード「テレビの未来に必要な次世代リーダー」についてお話しいただければと思います。テレビ業界に求められる次世代リーダーとは、どのような人物なのでしょうか?

落合:
「視聴率を気にするな」という声が聞こえた人ではないでしょうか。視聴率はテレビの価値を図る1つの指標ですが、「それよりも重要な尺度があります」と声を上げる人材が、業界内にもっと必要だと思います。
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前田裕二氏

前田:
「10万人が見ている」という数ではなく、その番組に対する興味や関心、つまり”深さ”にフォーカスしたほうが価値は明確になるはずです。

経済学において、景気の波の中で、もっとも長い景気のサイクルを「コンドラチェフの波」といいます。コンドラチェフの波は50年に一度起こるのですが、なぜそのスパンで発生するのかは分かっていません。そこで僕は、人が死ぬから50年に一度なのではないかと仮説を立てました。

20代や30代で成功事例を作ってしまうと、その成功事例を余生で打ち砕く自己否定的なイノベーションを起こすのが難しくなってしまう。ルールを作った世代の人たちは当然、そのルールを守りたいと思います。
ルールがルールを作った人たちとともに衰退してくのが50年くらいなので、「コンドラチェフの波」のような現象が起こるんだ思います。テレビ業界が変化しようと思ったら、現在テレビを作っている人材が今、現在やっていることを否定しないといけないんです。心理的に難しいことですよね。

落合:
ずっと続けてきたことを否定するのは困難なので、もっと短い期間で変え続けることが重要です。僕の座右の銘は「変わり続けることを変えない」。常に変化することを前提としていなければ、いざ行き詰まったときに手遅れになってしまうのです。
朝倉:
会社経営に例えて話をすると、番組の魅力を伝えることは、いわばIRに近いのかなと思っています。IRは投資家から得たお金をどう使うのかを説明する機能ですよね。投資家に対して目先の業績数値以外の尺度で事業の価値を説明できる起業家は強いんです。すぐには利益を生み出しそうにない事業に投資をお願いする際は、その意義をうまく伝えなければいけません。
今や世界のトップをひた走るAmazonは、会社の存在意義を語り続けることで成長しました。「利益率が低い」と言われながらも、彼らが築いている事業の価値を訴え続けたんです。
番組を視聴率という数字以外の尺度で訴え、訴えるだけではなく説得できる人が必要なんだと思います。

また「我見」に加えて「離見」を持っている人が必要という意味では、ひょっとするとテレビとは無縁の場所に次世代のリーダーがいるのではないかとも思います。

齋藤:
最近、日本テレビのプロデューサー・土屋敏男さんが監督を務めた映画『We Love Television?』を観ました。作中で萩本欽一さんが「テレビがつまらなくなったわけではない。全てのチャンネルが同じになってしまったんだ」とおっしゃっていました。Webニュースを取り上げたり、新聞の情報を放送したり、どこのテレビ局も情報の焼き直しをしているというのです。

テレビが再び面白くなるには、もっと「こういう内容をやるべきだ」と説く新たな旗振り役が必要なのだと思います。変革を恐れない勇気と度胸を持ったリーダーシップがなければいけないのではないでしょうか。

続く「テレビに求められる”イノベーションのテクニカルチャレンジ”」では、本記事に引き続き、テレビの未来に必要なイノベーションについて議論した。
MC落合はテレビの「ながら視聴」について指摘し、前田氏は自身が手がける「SHOWROOM」を引き合いに出し、能動的メディアと受動的メディアの戦略の違いを語る。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi

Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh

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カメラマン︰松平伊織

(2018-1-16 15:00:00)

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リーダーに求められる能力とモチベーションの源泉–朝倉祐介×前田裕二 リーダーズトーク

「人生100年時代の次世代リーダー」をテーマに行われたSENSORSサロン。
ゲストはシニフィアン株式会社共同代表 朝倉祐介氏と、SHOWROOM株式会社代表取締役 前田裕二氏だ。

4回にわたってお届けする第2弾記事では、ゲストの二人とMC二人が過去の経験を踏まえリーダーに求められる能力について議論した。”スタートアップエコシステム”が整いつつある日本で、起業家たちが這い上がるための”モチベーション革命”にまで話題は及ぶ。

■ ジェネラリストは、スペシャリストを束ねるスペシャリスト

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(左より)齋藤精一、落合陽一

–それでは、最初のテーマ「専門性」についてお話しいただければと思います。

落合陽一(以下、落合):
リーダーにはジェネラリストとスペシャリスト、どちらが向いているのかという話があります。お二人はどのように考えていますか?
前田裕二(以下、前田):
僕は、リーダーはジェネラリストじゃないほうがいいと考えています。リーダーには「大義」を持っていることが求められる。「なぜやるのか(Why?)」が伝わることで、メンバーを強く惹きつけられるからです。

専門性は「偏愛」という言葉に置き換えられます。好きだから研究し、没頭して、その結果専門性が身につくんです。好きだから追い求めるという姿勢も「大義」だと思うんですよね。

朝倉祐介(以下、朝倉):
ジェネラリストとスペシャリストに分ける考え方もありますが、ジェネラリストはスペシャリストを束ねるスペシャリストであるとも考えられます。
落合:
その通りです。投資銀行やコンサルティングファームの人材はジェネラリストだと思われがちですが、アイディアをビジネスモデルへとまとめる能力がずば抜けている。つまり、スペシャリストなんです。しかし、いわゆる職人気質のスペシャリストは投資的な視点がないため、ビジネスとしてうまくいかないことが多いと感じています。
前田:
投資銀行時代は非常に多くのビジネスモデルをみてきたので、そのビジネスが成長するかどうかをかなりの確度で予測できます。たしかに僕の経験上、固有の領域を偏愛しているスペシャリストは投資的な視点が欠けていて、ビジネスがうまくいかないケースも少なくありません。
何かに対して偏愛と専門性のある人材と、経営的、投資的な専門性のある人がマッチングしていく必要があると思います。
朝倉:
スペシャリストにしてもジェネラリストにしても、1人で何かをなし遂げることは不可能です。人はそれぞれ得意な分野と苦手な部分があり、だからこそチームがある。そのチームを誰が引っ張るのかといえば、先ほど前田さんは「大義」とおっしゃいましたが、最終的には想いが一番強い人なんだと思います。

■ 日本のスタートアップ業界には憧れのヒーローがいない

–ここからは「スタートアップ」について伺っていきます。

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(左より)前田裕二氏、朝倉祐介氏

齋藤精一(以下、齋藤):
日本のスタートアップシーンが活気付くには、アイディアをビジネスに導くメンターが必要だと思います。起業するためのエレメントが揃っても、それをプロデュースする人材が足りていないのではないでしょうか。
朝倉:
スタートアップを生み出す環境づくりを、生態系に見立てて「スタートアップエコシステム」と表現します。まさに私が研究しているテーマです。代表的な例がシリコンバレー。起業家がいて、教育機関があって、投資家がいる。さまざまな条件が揃って初めてスタートアップエコシステムが機能します。日本は過渡期にあり、少しずつエコシステムが育ってきていることは間違いありません。事実、私がネイキッドテクノロジーを経営していた2010年と去年のベンチャー起業への投資額を比較すると、およそ3倍になっています。

しかし、まだまだ欠けている要素も少なくありません。また、スタートアップが盛り上がったとしても、上場した途端に支援の枠組みから外れて失速してしまっては意味がない。これから飛躍していかなければならない若い企業がスタートアップとして扱われなくなると、可能性を残したまま成長が止まってしまいかねないんです。スタートアップが上場し、その後さらに成長が加速していく成功事例を次から次へと生み出さない限り、スタートアップは一部の人たちだけで盛り上がっている局所的なブームというくらいにしか社会的に認知されません。

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前田:
僕は、日本のスタートアップ界にはヒーローが決定的に足りないと思っています。ビートルズがいたから「4人組のバンドを結成しよう」となるし、マイケルジョーダンがいたからバスケットボールがポピュラーになった。若い時期の意思決定は、こうしたある種の憧れに突き動かされるものが多いと思うんです。

色々なエレメントは揃ってるんだけれど皆が起業しないのだとすれば、起業することが格好いいと思われる風土を作っていく必要がある。

■ アントレプレナーのモチベーションを駆り立てる「内省と物理量」

落合:
以前、宇宙飛行士の毛利衛さんと話していたら「落合君には何が聞こえたの?」という問いを投げかけられました。初めは問いの意味を理解できずにいましたが、「何にピンときたのか」を問うているんです。

プロフェッショナルには、ロジカルな「XがあるからYする」という話ではなく、コンテキストなしに偉業に挑戦する人がいます。ピンときて、そこに没頭していくんです。僕にとってピンときたものが、”リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性”、現在研究している「デジタルネイチャー」です。

齋藤:
次に議題にしたいと思っている「モチベーション革命」につながっていきそうですね。僕はよく社員に「社長はいつ寝ているんですか?」と聞かれます。結構寝ているんですけど、楽しくて没頭しているので常に働いているように映っているんだと思います。

僕がモチベーションというか、ライゾマティクスを起業後「一生この仕事を続けられる」と思ったのは、小さいことをずっと調べていたのに、点が面になるように一気に全部が分かる瞬間を経験したことです。象形文字がいきなり読めるように、突然知識が広がるような感じです。

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朝倉:
モチベーションの源泉は合理的なものではありません。事象の大小に限らず、「俺がなんとかしなければ」と思った瞬間に生じるものです。起業も損得だけで考えたら、辛いことの方が圧倒的に多いので、あえてやる必要はないんです。

アントレプレナーの定義はさまざまありますが、誰からも頼まれもしないのに、自分が成し遂げなればならないと固く信じることを実現するために、率先して行動する人のことだと思っています。

前田:
モチベーションのスイッチは意図的に押せるものではないかと思います。重要なのは「内省と物理量」です。自分がどんなときに幸せを感じるのかを紙に書き出してみると、本当は無数にあるはずなのに、案外書くことができないんですよね。

モチベーションの源泉をあらかじめ知っておけば、意図的に自分をそこに導ける。だからこそ内省の時間が必要です。そして、果たしてそれが本当なのかを測定する経験、つまり物理量が必要になります。

自分のことを知らなければ、本当は幸せだと感じていないことに時間を浪費してしまう。モチベーションを維持しながら事業を継続するには、ビジネスモデルよりも自己を理解することの方が大切なんです。

続く「イノベーションを起こすリーダーの思考・視点」では、ゲスト二人とMCが、リーダーに求められる「具体と抽象を行き来する思考」について語った。
前田氏は能を引き合いに出し、「三つの視点」の重要性について言及する。また最後には、「テレビの未来に必要な次世代リーダー」についても意見が交わされた。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi

Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
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カメラマン︰松平伊織

(2018-1-10 15:00:00)

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逆境を力に変えたリーダーたちの人生ストーリー–朝倉祐介×前田裕二 リーダーズトーク

「人生100年時代の次世代リーダー」をテーマに行われたSENSORSサロン。
ゲストはシニフィアン株式会社共同代表 朝倉祐介氏と、SHOWROOM株式会社代表取締役 前田裕二氏だ。

4回にわたってお届けする第1弾記事では、ゲストの二人がリーダーに至るまでの人生ストーリーを伺った。朝倉氏はかつてジョッキーを目指していた経験が、前田氏は両親を失った逆境から這い上がる反骨精神がルーツにあるという。

彼らはいかにして現在の地位に辿り着いたのだろうか。人生100年時代を牽引する次世代リーダーに共通する経験や思考を紐解いていく。

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(左より)前田裕二氏、朝倉祐介氏(右より)落合陽一、齋藤精一

まず『SENSORS』MCの二人は、今回のテーマ「人生100年時代の次世代リーダー」をどのように捉えているのだろうか。

齋藤精一(以下、齋藤):
時代が変化しても、リーダーに求められるものはあまり変化しないと思います。
僕も会社を経営しているのでリーダーの立場にありますが、リーダーとして求められることよりも、会社として、個人としてやりたいことが変わってきている印象です。
落合さんは経営者でもあり、研究室のリーダーでもありますが、いかがでしょうか?
落合陽一(以下、落合):
27歳で初めて研究室を持ちました。最初はお金が無くて苦労しましたが、熱心なメンバーたちが集まってきて支援してくれたおかげでやってこられました。
そういう意味で、フォロワーがいることはリーダーの一つの指標になると思います。
ただ、僕はよく雑用を任されているのでリーダー感が全くないですよ。

MCの齋藤、落合はどちらも経営者。企業の主として、メンバーの未来を背負うリーダーである。
今回のSENSORSは、MCの二人がゲストとともに「人生100年時代の次世代リーダー」像を紐解いていく。

以下、今回のゲストである朝倉祐介氏と前田裕二氏を交えたディスカッションが行われた。
30歳という若さでミクシィの代表に就任し、時価総額180億円から5,000億円に立て直す劇的なV字回復を達成し、現在はシニフィアン株式会社で共同代表を務める朝倉氏の自己紹介から話は始まる。

■ 「人生に後悔を残すほど悲しいことはない」–15歳で海外へ渡った朝倉氏の人生ストーリー

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–まずは、朝倉さんから自己紹介をお願いできますか?

朝倉祐介(以下、朝倉):
シニフィアンの朝倉です。
中学校卒業まで兵庫県で育ち、卒業したタイミングで競馬の騎手を目指し単身でオーストラリアへ留学しました。
もともと実家から阪神競馬場が近く、競馬になじみ深い環境にいたことも一つの理由ですが、何より先々の将来に希望を見出せなかったことが最大の決断理由です。

高校受験に向けて勉強をしている際に「なぜこんなにも一生懸命勉強しなければいけないのか?」と考えました。偏差値の高い大学に入学し、優良企業に勤め、社会的ステータスと高いお給料をもらうことに意義を見出せなかったんです。
それなら、自分が好きなことをやった方がいいだろうと。

結局騎手になる夢は叶いませんでしたが、帰国後に大学受験資格を取得できる専門学校に通い、20歳で東京大学に入学しました。
在学中にネイキッドテクノロジーを共同創業し、大学卒業後に外資系経営コンサルティング会社で3年ほど勤務した後、ネイキッドテクノロジーに復帰しています。
同社で代表を務めていた頃にミクシィから買収のオファーをいただき、そのままミクシィにジョインしました。
入社時は平社員でしたが、業績不振を立て直すために代表に就任しました。

–創業したネイキッドテクノロジーでも、買収先のミクシィでもリーダーを任されたのはなぜですか?

朝倉:
ミクシィに入って数か月のころから、会社の業績が厳しい中、こういう風に会社を変えていくべきではないかという提案書をまとめて、声の大きそうな社員に「お茶行こう」、「ランチ行こう」と片っ端から声をかけていったんです。
リーダーになることを目指していたわけではありませんが、目の前にある課題を一つ一つ解決していったところ「朝倉に任せる」と言われるようになったんだと思います。
私自身、過去に夢を諦めた経験があるので、そもそも変わることを恐れていません。買収されて入社した経緯から、組織にしがみついていたいとも思っていなかったので、大胆な判断ができていたのではないでしょうか。

また、騎手を目指していた経験は少なからず影響しているかもしれません。
調教師の先生から「騎手がリーダーシップを発揮しなければ馬は言うこと聞かないから、自分が指導する立場にあるんだという心持ちを持て」と常々言われていました。

齋藤:
そもそも15歳で騎手を目指し、単身オーストラリアに行くという意思決定ができる人なんて滅多にいないと思います。
朝倉:
その瞬間にやりたいことをやらなければ、悔いを残す人生になると思ったんです。
仮に失敗しても、挑戦したのであれば諦めがつきます。ただ、やらない後悔は一生残る。10年後、20年後に振り返り「本当は騎手になりたかった」と悔いを残すのが嫌だったので、猛反対する親を説得しました。

■ 不遇を言い訳にしない。逆境を力に変えた次世代のリーダー・前田裕二

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–続いて、前田さんお願いします。

前田裕二(以下、前田):
SHOWROOMの前田と申します。
過去の話をすると、8歳のときに両親を失い、1年弱住むところもなく放浪していたことがあります。その後親戚に引き取られたのですが、馴染むことができずにグレてしまい、ヒネくれた幼少期を過ごしていました。

誰に頼ることもなく自分の力で生きていきたいと考えるようになり、10歳で近所の駄菓子屋でアルバイトをさせてくれないかとお願いしにいきました。僕の人生で初めてビジネスと接点を持った出来事です。

アルバイトの時給の相場が800円だと認識していたので、成人の半分、10歳の自分を相場の半額の時給400円で雇ってもらえないかと話をすると、「見ての通りうちの駄菓子屋は、1時間あたり400円の売り上げもない。うまい棒を1時間に40本以上売らないと君のことは雇えない」と断られてしまいました。
そこからお金を稼ぐ手段を色々と試してみた後、11歳で路上に出てギターの弾き語りを始めたんです。最初は誰も立ち止まってくれませんでしたが、徐々にコツをつかんだ結果、一万円札を置いていってくれる方にも出会いました。
これが僕の立ち上げたサービス「SHOWROOM」の原点です。

–大学を卒業後、投資銀行を経て「SHOWROOM」を起業されています。創業までの背景を教えていただけますか?

前田:
そもそも進学するつもりはなかったのですが、親戚のお兄さんのすすめで高校に進学しました。
信用していた人の言葉だったので。そして高校生のころから、不遇であったことの反骨心から、たとえば英語を勉強してディベートの大会に出て帰国子女に勝つみたいなことをやってました。そして大学卒業後、投資銀行に就職しました。

投資銀行時代は2年目で海外赴任するなど、順調なキャリアを歩んでいたと思います。しかしそんな中、大学時代のバンドメンバーが亡くなってしまったんです。そこで強く死生観を持ちました。
自分のキャリアについて考えた結果、代替不可能な価値を世の中に生み出すべきだと考えたんです。

そこで会社を退職し、SHOWROOMを立ち上げました。ビジネスモデルのルーツは路上ライブの経験であり、路上ライブをインターネット上の仮想空間で再現しているんです。
自分の経験に紐づく事業を手がけることは、代替不可能性があると思っています。

齋藤:
苦しさや劣等感をベースに努力した経験が僕にもあります。
前田さんの進学や就職には過去の苦労が影響しているんですよね?
前田:
現時点で自分が成功しているとは思っていませんが、チャンスに恵まれなかった過去の経験が反骨精神を生み出し、ここまでやってこられました。

続く「リーダーに求められる能力とモチベーションの源泉」では、ゲストのお二人とMC二人が過去の経験を踏まえ、リーダーに求められる能力について議論した。
“スタートアップエコシステム”が整いつつある日本で、起業家たちが這い上がるための”モチベーション革命”にまで話題は及ぶ。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
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編集:長谷川リョー

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カメラマン︰松平伊織

(2017-12-26 16:00:00)

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12月24日(日)3:30~放送:「人生100年時代の次世代リーダー」シニフィアン 朝倉祐介(元ミクシィ) × SHOWROOM 前田裕二

「SENSORS」の放送内容は・・・

■ 「人生100年時代」の次世代リーダー2人が登場!





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  朝倉祐介(シニフィアン)

  
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       前田裕二(SHOWROOM)

ミクシィの業績を劇的にV字回復させたシニフィアン共同代表 朝倉祐介氏、双方向コミュニケーション型の動画配信プラットフォーム「SHOWROOM」を立ち上げた前田裕二氏をゲストに迎え、クリエイティブディレクター 齋藤精一とメディアアーティスト 落合陽一が「リーダー論」について徹底討論!次世代リーダーたちの経験、思考、習慣を掘り下げる。
リーダーにふさわしいのはスペシャリストORジェネラリスト?
「抽象化ゲーム」、「次世代リーダーと世阿弥の共通点」とは?

動画配信サービス「Hulu」にて過去の放送や未公開トークを配信中!

<出演者>
【MC】
齋藤 精一(ライゾマティクス代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
落合 陽一(筑波大学准教授・学長補佐/メディアアーティスト)

【ゲスト】
朝倉 祐介(シニフィアン共同代表)
前田 裕二(SHOWROOM代表取締役社長)

【ナビゲーター】
滝 菜月(日本テレビアナウンサー)
佐藤 真知子(日本テレビアナウンサー)


番組名:SENSORS
放送日時:12月24日(日)[土曜深夜]3:30~4:30
放送:日テレ

(2017-12-22 15:00:00)